概説
慢性の長期的な軟部組織の静態損傷、又は動態損傷の病変の中で、筋肉が長期に渡り持続的な収縮状態であることから機能が停止し、筋肉はやはり柔軟な状態へ回復することができず、ある時は数時間、又は数年にわたることがあります。医学界ではこれを「静態残余張力」と呼びます。これは緩慢な過程で、応力の負荷速度は遅く、力を受ける部位は主に筋腱や骨付着部になります。主に骨膜に炎症反応が発生し、人体自身が行う修復過程の中で結節、癒着が発生します。筋膜増殖や肥厚、及びカルシウムの沈着が起こり、更には骨質増殖に至ります。炎症反応後期には組織変性や線維間質増加が主になります。医者はこれらの検査をする時に明らかに、この病変部位の変化を感じ取ることができます。医者の手もとで索状の痙攣した筋腱や筋膜を触知することができます。この病変部位が異なる、及び病変軟部組織が異なることにより、異なる結節のサイズを触知して確認できます。
結節の種類
1)塊状結節
通常、この種の結節の多くは腫脹した腱鞘や皮膚、皮下組織に発生し、例えば腱鞘炎や脂肪腫、皮脂腺瘤などです。この種の結節の中点には明らかな袋状の感覚があり、手指で触れると中央は柔らかく、辺縁は比較的硬い塊があります。その一方でこの種の塊状の結節は遊離骨端に好発し、この表面に付着する筋肉、或いは筋膜に多いため、一つの付着する筋肉が労作性損傷し、炎症が発生すると、炎症はあらゆる遊離骨端へ波及し、そのため形成される結節部位は比較的大きいです。例えば第3腰椎横突起、第12肋骨端などの結節は比較的硬く、中央は袋状の感覚で、圧痛は明らかです。
2)索状結節(索とは縄、ロープという意味)
通常、筋腹や筋腱に発生し筋肉に滅菌性炎症が発生した時、筋肉に出現する腫れ、痙攣は筋腹や筋腱でぴんと張った索状結節として触知できます。この種の結節は筋肉や筋腱の走行と概ね一致しています。例えば梨状筋の炎症の時は臀部に腫れた梨状筋の筋腹を触知でき、大腿骨の大転子と大坐骨孔の間を斜めにまたいでいます。その一方でこの種の索状結節はとりわけ筋肉の付着部付近、或いは筋肉付着部上に索状結節が発生し、この種の索状結節の走行する向きは筋肉に対し垂直で、これは筋線維を巻き付ける目的です。この種の結節は超微針刀によりほぐす結節で、前者の結節は圓利針を使用する結節です。通常の臨床では多くのケースで筋肉や筋腱に索状結節を触れられ、正常人の体でも触れることができます。しかし、手の感覚に頼り異常な結節を鑑別するのは容易ではなく、圧痛の程度の経過により、異常か否か鑑別できるかということを左右します。最終的にこの索状結節が労作性損傷によるものであると確定するのです。当然、触診の熟練程度により、筋肉が走行する向きからこの索状結節が超微針刀の治療点か否か判断できます。
3)顆粒状結節
顆粒状結節は大きいものから小さいものまであり、大きいのは例えると落花生のような、小さいのは例えるとゴマのようなサイズです。主には筋腱や骨突起の付着部で、労作性損傷によりカルシウムの沈着、硬化が起こり、更にはカルシウム化或いは骨質増殖に至ります。例えば「ばね指」は母指のMP関節掌側根部に米粒サイズの結節が触れられます。
4)円錐状結節
円錐状結節とは、通常骨突起部に発生し、当該部位に増殖や付着する筋肉、靭帯がカルシウム化する時に、局部の軟部組織は硬化し、増殖した円錐状の結節を触れることができます。テニスで病変した時、上腕骨外側上顆に鋭く尖った筋膜が肥厚し、カルシウムが沈着したカルシウム面を触知できます。
5)不規則状結節
この種の結節は多くの筋肉が付着する骨面上に発生し、多くの筋肉の労作性損傷があるので、付着部位は一つの骨面上ですが、付着する区域は同一方向ではなく、一つの付着部位の軟部組織が労作性損傷や痙攣を起こすと、骨性組織が引張られ、この一つの骨性組織に付着する多くの筋肉、軟部組織もまた痙攣します。各自で異なる程度の結節が産生され、医者が検査する時、同時に異なる筋肉の損傷した結節を触知でき、手元で不規則な形状の結節が現れます。その一方で、この種の結節は筋肉と筋肉が交差する部位で発生し、2つの交差する筋肉は異なるリズムで収縮し、筋肉と筋肉の間に摩擦が生まれ、それにより滅菌性炎症が発生し、長い間の癒着が結節を形成し、筋肉が交わる部位で硬化した索が形成されます。方向が異なり、多くの筋肉が交差して通過する区域に至っては、一旦労作性損傷が形成されると、多くの不規則な索が交差する現象が起こり、生成される結節もまた不規則な形状を呈します。、もし上腕骨の大結節上に労作性損傷がある時は、容易に不規則な病変である結節を触れます。
6)甍(いらか)状結節
甍状結節は臨床でよく見られるというわけではありません。多くは筋肉が豊富な部位に発生し、かつ多くは外傷により引き起こされます。例えば重たい物で負傷したり交通事故です。部位は大腿、臀部、下腿の腓腹筋に多く見られます。多くは外傷により皮下出血が起こり、血塊の吸収が不良で組織化し硬くなります。皮下に沿って分布し、皮膚の下に瓦のようなものが覆っているようで、上下に押すと動きます。重度な場合は患者の活動や機能に影響を与えます。私はこれまで1人の患者を治療しました。交通事故により臀部の出血を引き起こし、当時はまだ結節を重視していたわけではなく、病院でレントゲンを撮りましたが、骨折はありませんでした。そのため、経過観察しました。2日経って臀部に一つの大きな青アザを確認しました。7日後、局部(臀部)の硬化が始まり、歩行はやや遅くなり、触診すると手のひら大の硬い結節が発生していました。その結節を手で押すと動き、結節が上下にすべり動くようでした。その後、漢方の外用薬を使い治癒しました。このような結節は比較的大きいため、超微針刀の適応範囲ではなく、このような結節に超微針刀を使用しても効果はありません。
結節の好発部位
1)筋肉の起始停止部、例えば烏口腕筋の起始である烏口突起
2)筋肉と筋肉が交差する部位。2つの筋肉間で異なるリズムで収縮が起こり、摩擦が発生して結節が形成されます。例えば腸骨筋と大腰筋は異なるリズムで収縮する、或いは準備が出来ていない状況で収縮することで、2つの筋が交わる鼠径部で結節が出現します。
3)筋肉の力学を受ける部位、或いは凝りの力を受ける部位:例えば肩甲挙筋の4つの起始部の中で第2頚椎横突起があります。第2頚椎横突起は頚椎の中で最大で、付着部も最大で、応力も最大です。そのため容易に労作性損傷します。また、棘上靭帯損傷の中で第7頚椎棘突起は、棘突起の長さが最も長く、応力が最も集中するため、最も損傷しやすいです。
4)骨の遊離端:例えば第3腰椎横突起、第12肋骨端、剣状突起など。
5)骨性突出部:例えば上腕骨外側上顆、大腿骨大転子など。
6)高い応力がかかる腱組織:例えば項靭帯の損傷によるカルシウム化。
7)神経の出口:例えば上殿皮神経が出る部位、腸骨稜後縁の中点から7-10cmの部位
8)関節に隣接する部位:例えば膝関節内側側副靭帯損傷時、膝関節内側の結節部
正常結節と異常結節の鑑別
正常な人体にも結節があります。正常な結節は強い力で押すと圧痛を生じます。例えば私たちがよく試しに使う筋肉である胸鎖乳突筋を押すと乳様突起部に圧痛があります。ここで、正常な結節と異常な結節どのように見分けるのでしょうか?私たちは両手で、同時に左右を圧迫する方法をとっています。左手、右手で身体の対称的な面である両側を押し分けるには、押す力は左右の力を同じ状況下であれば、通常正常な結節か、異常な結節か、以下の3つの面で鑑別できます。
1)圧痛の比較:左右の押す力はほぼ同じで、左右対称的な部位で圧迫した状況で、痛みが強い結節は病変した結節です。
2)サイズの比較:解剖的に特異的変化が無い状況で、隣接する上下の結節のサイズを比較し、異常なものが病変した結節です。例えば大腰筋が損傷した時、第1腰椎か第2腰椎の棘突起が大きくなります。また、第7頚椎棘突起と第6頚椎棘突起は解剖的特異性のため、比較できません。
3)結節の硬さの程度:圧痛がある前提で、左右、上下を比較し、異常な結節は正常な結節と比べて柔らかいか、硬いかのどちらかです。正常な結節と比べて柔らかい大半の病変部位は筋腹にあり、組織は水腫を呈しています。正常な結節と比べて硬い大半の病変部位は筋腱上にあります。以前、骨質増殖の問題について記述した時、筋力は低下すると説明しました。筋力を高めるために体は腱にカルシウムを蓄積します。そのため、硬度が正常な結節より硬い場合、骨質増殖に至ります。
参考文献:胡超伟,超微针刀疗法,湖北科学技术出版社:2014