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北京堂鍼灸伊東

膝関節外傷性滑膜炎の治療法

膝関節外傷性滑膜炎の治療法
目次

概説

この疾患は膝関節滲出性関節炎ともいわれます。膝関節の損傷、手術などの刺激や蓄積する疲労損傷、膝関節周囲の軟部組織損傷は滑膜を刺激、損傷し、充血と滲出が起こり、結果的に大量の関節液貯留を引き起こします。

解剖

滑膜は関節包の内側に隣接しています(図参照)。滑膜は血管に富み、滑液を生じます。滑液は関節腔内へ滲出し、関節面が滑らかに動く潤滑油のような役割を果たします。

しかし、滑膜に炎症が起こると滑液の滲出が多量となり、関節水腫という「膝が腫れる」といった状態となります。関節水腫の状態になると関節内圧が高まり、痛みを感じやすい状態になります。軽度屈曲位が一番楽な姿勢になるので、膝は軽度屈曲位を呈します。

病因・病理

膝関節外傷性滑膜炎は、膝関節周囲の軟部組織損傷により引き起こされます。軟部組織損傷は、関節に軽度な”ずれ”を生じさせ、膝関節にかかる力の不均衡と関節力学のアンバランスを引き起こし、関節に応力が加わった時に関節の破壊を防止するために、滑膜は代償的な肥厚、癒着、痙縮を引き起こし、関節の潤滑を保つために大量の滑液を分泌します。同時に膝関節の動きを制限することで関節症状を軽減し、臨床症状を引き起こします。鍼灸治療により膝関節周囲の軟部組織の癒着、瘢痕が緩和され、膝関節内の張力、引張り応力。圧縮応力のバランスが調整されます。

臨床表現

・膝関節は膨隆し(関節水腫+)、張痛を生じることがある。
・膝関節の屈曲、伸展に著明な関節可動域制限がある。
・歩行時痛がある、重症なケースでは歩行困難になることもある。

診断の要点

・外傷歴、損傷歴がある
・症状:膝関節の疼痛、腫脹、活動制限
・検査:圧痛+、膝蓋跳動+
・関節穿刺:関節液は淡黄色、ピンク色を呈する

治療法

体位:仰臥位で膝60°屈曲位
体表位置:内膝眼、外膝眼

60mmの鍼を使用し、膝蓋靭帯の内側(内膝眼)と膝蓋靭帯の外側(外膝眼)から大腿骨軸と平行に関節裂隙へ鍼を入れます。

体位で膝の屈曲60°とありますが、これは目安で屈曲60°で安楽姿勢でない場合は更に浅い角度で実施します。膝の関節可動域が100°以上になると、屈曲90°で施術が可能になることが多いです。膝下にはタオルや三角枕などを置き、患者がリラックス出来るように環境を整えます。

手技療法

鍼施術だけでは、関節の可動域制限が残りやすく、可動域を考えると手技療法を併用する方が予後が良いです。患者の膝関節を90°曲げて助手が大腿下端を把持し、術者が足首を両手で把持し、下腿の内旋、外旋も交えて牽引します。牽引しながら可能な範囲で膝を屈曲し、ゆっくり伸ばします。

参考文献:王华,针刀医学临床诊疗与操作规范,中国中医药出版社:2012.p66-67
     林典雄,運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈 下肢編,運動と医学の出版社:2018,p71-72
     塩田浩平(訳),グレイ解剖学第3版,ELSEVIER:2016,p16

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