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北京堂鍼灸伊東

円回内筋症候群の治療法

円回内筋症候群の治療法
目次

解剖

円回内筋内側
円回内筋外側

 円回内筋症候群は正中神経が前腕上部で円回内筋の上腕頭と尺骨頭の間を通過する時、円回内筋両頭の間の腱弓による圧迫が引き起こす一連の症候群です。浅頭は上腕骨内側上顆から起こり、深頭は尺骨の鈎状突起から起こります。筋線維は下外側へ向かい、内側上顆付近では腕橈骨筋の下に位置しており、停止部は橈骨の前外側の中央から近位1/3の領域に位置しています。両頭が合流する所に円回内筋腱弓を形成します。この腱弓は※ヒューター線から下方3~7.5cmに位置しており、長さは約4.5cmです。尺骨頭の組成の違いにより、異なる形状の腱弓が形成される場合があります。
尺骨頭の組成の違いにより、異なる形状の腱弓が形成される可能性があります。尺骨頭は筋性、腱性両方の特性を有しています。腱弓は正中神経の撓側にあります。また尺骨頭はそれ自体が腱弓を形成していますが、尺骨頭が存在しない場合、腱弓は存在しません。円回内筋は正中神経の支配を受けており、その機能は前腕を回内し、肘を曲げることです。

※ヒューター線:肘関節伸展位で内側上顆と外側上顆を結ぶ線

 正中神経は上腕で枝分かれせず、肘の上腕動脈内側にあり、上腕動脈と共に上腕二頭筋腱膜に覆われています。円回内筋の深頭繊維上、浅頭筋線維の下を通り、浅指屈筋両頭の間の腱弓に入り浅指屈筋内と外側頭の間の腱弓を通り、前腕浅、深屈筋の間に入ります。正中神経は前腕後部で枝を出し、円回内筋や撓側手根屈筋、長掌筋などを支配します。

病因病理

1)肘の慢性労作性損傷:前腕の反復する回内運動(ドアノブを内側に回すような運動)、また手指の屈曲運動時の慢性労作性損傷により、円回内筋の肥大及び浅指屈筋が緊張して正中神経を圧迫します。

2)上腕二頭筋腱膜が広がり肥厚する、撓側手根屈筋の筋腱組織の水腫などにより正中神経の圧迫を引き起こすことがあります。

3)円回内筋と浅指屈筋弓との間で形成される異常な線維束帯は円回内筋両頭の間、浅指屈筋起始部辺縁の部位で硬い軟部組織が発生し、局部に瘢痕を形成し、局部の腫れにより神経を圧迫し発病します。

4)創傷:肘関節の脱臼、前腕や上腕下部の骨折、コンパートメント症候群、痙攣性脳性麻痺で長期回外位固定により正中神経の圧迫を生じます。

臨床表現

1)通常、円回内筋症候群は比較的ゆっくりと発症しますが、筋肉を捻って損傷した後は突発的な発症もあります。急性発症は反復して握る或いは回内する、および両方の動作を行った後発症します。例えば卓球です。

2)患者は撓側3つの指が放射状に痛む、又は不快感を感じることがあります。指の屈筋の筋力低下が起こることもあります。その後前腕と手指の痛みを感じ、仕事の時に症状が増悪し、夜間のしびれはありません。

3)重症な場合は正中神経支配領域の感覚障害があります。撓側3本の指が麻痺することもあります。

診断

1)ゆっくりと発病し、症状は反復する握る或いは回内する動作後に発病します。

2)肘の疼痛や不快感があり、母指と示指(人差し指)に麻痺が生じます。

3)手関節の屈曲筋力が低下します。特に指を曲げる、又は手関節屈曲筋力に低下がみられます。

4)手関節を屈曲位で抵抗に抗する時に、手は尺側に変位します。これは撓側手根屈筋が麻痺し、尺側手根屈筋が正常であるためです。正中神経が円回内筋の平面で圧を受ける時、前腕回内の筋力は減弱しませんが、回内及び手関節屈曲の疼痛は増悪します。上腕二頭筋腱膜の部位で圧を受ける時、前腕回外と肘屈曲の時に痛みが増悪します。浅指屈筋腱弓の部位で圧を受ける時、中指の屈曲で前腕の痛みが増悪します。

5)円回内筋の起始部周辺に、圧すると痛む結節があることがあります。

6)筋電図検査で異常を示すことがあります。

治療

1)治療部位
a点:円回内筋起始部の筋腱膜の疼痛性結節部位

b点:円回内筋停止部の筋腱膜の疼痛性結節部位

2)操作
患者は仰臥位(あお向け)で手は掌を上に向けてベッドに置く。治療部位を露出し、通常の消毒をする。刺針深度は0.5cmで刃先は前腕と平行にします。筋膜の結節を切り、術後は綿球で治療部位を1分間圧迫する。

おわりに

 ここでのポイントはまず、円回内筋の癒着、瘢痕化は正中神経の神経障害を引き起こしやすいという点です。前腕近位部の断面図を見ると、正中神経が円回内筋の上腕頭と尺骨頭に挟まれている位置関係であることが分かります。肘の痛みや不快感と手指(母指、示指、中指)の感覚異常や筋力低下を呈する時は、円回内筋の問題である可能性は高いと思われます。もちろん、肘は多くの筋肉がひしめき合っているので、上腕二頭筋や浅指屈筋などの可能性もありますが、上記の内容を知っていると、合理的に評価ができるのではないでしょうか。皆さんの臨床に役立てていただけると幸いです。

参考文献:河上敬介 他,改訂第2版 骨格筋の形と触察法,大峰閣:2013
     胡超伟,超微针刀疗法,湖北科学技术出版社:2014

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