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北京堂鍼灸伊東

脊柱区域の病因学

脊柱区域の病因学
目次

序論

 脊柱区域という用語は、その範囲に応じて命名されており、その範囲の中で人体解剖構造の特殊性により、人体の多くの系統にわたる疾患に直接的な影響を与えうるものです。しかし、かつて真の研究を行っていなかったので、人類の多くの疾病の重要な診断意義と治療意義を認識できていませんでした。実際、東洋医と西洋医はかつて漠然とその存在を認識していましたが、明確に系統立てた論述が無く、臨床的な治療や診断に応用されたことはありませんでした。

 例えば、中医の華佗夾脊穴です。古代の名医である華佗はその超人的な知恵で脊柱両側に鍼灸治療を行うことを発明し、多くの難治性内臓疾患を治しました。惜しくもその事は歴史的書物に記載があるだけで、華佗が書いた医学書は現存せず、後の医家が歴史書に基づき脊柱両側の17対の刺鍼点を確定し、取穴名を”夾脊”としました。現在の解剖学的研究によると、これらの穴に相応する椎体の横突起上に、この穴が多くの内科疾患を治療し、有効、無効どちらのケースもあり、このことでこの穴位は鍼灸臨床上の応用が少なくなり、一部の鍼灸医がこの穴位に対して精通していない状況ですが、この事は我々現代人に向けた重要な研究テーマであり、この研究テーマを失ったら、それは大きな誤りとなります。

 また、現代医学の脊柱病因学に関する研究では、既に脊柱が各椎体の骨関節損傷は相応の内臓疾患を引き起こすことが分かっています。整脊手技を用いてこれらの骨関節損傷を整復すると、その難治性の内科疾患は良い効果を得ます。中国で脊柱病因学に関する研究で最も業績を残した魏征教授は、医学会で広く称賛されました。この研究成果は我々に脊柱区域が重要な解剖構造であることを示し、脊柱の損傷は内科疾患の重要な原因を引き起こすのです。
研究の文章である脊柱区域は軟部組織の病理変化以外は、脊柱の骨性組織の病理変化ということです。

脊柱区域の構造と病因病理

 脊柱区域の範囲は上は後頭骨の上項線から下は尾骨末端までで、両側の頚部棘突起中央線より外側に2cmで、胸、腰、仙部は外側に3cmです。このように一つの範囲内で様々な組織、器官を脊柱区域と呼びます。脊柱区域内には内臓疾患を引き起こす筋肉、靭帯、関節包、神経、骨性組織等があります。脊柱区域と内臓自律神経が隣接する主な組織構造は交通枝、脊椎洞神経などがあり、これらの組織を経由して脊柱区域内の情報が関係する内臓の自律神経に届き、それにより、内臓機能に変化が生じ、多くの難治性の内臓疾患を引き起こすのです。

 交通枝や脊髄洞神経などの情報伝達機能は、非常に細く小さいため軽視されてきましたが、実はその情報伝達機能は軽視できないことが、研究により証明されています。それは我々が細い銅線に大量の情報を入出力するのと同じようなことであり、情報伝達量は伝える媒体の大小と正比例するわけではありません。

 脊柱区域内の様々な組織、器官が内臓疾患の異なる病因病理を引き起こす状況は以下の通りです。

 筋肉、靭帯、筋膜、関節包などの軟部組織は脊柱区域内で疲労性損傷を起こしやすく、慢性軟部組織損傷の病因病理理論に基づくと我々は理解することが出来ます。損傷後、自己修復過程の中で、新しい病理要素である癒着、瘢痕、痙縮、閉塞を形成し、この四大病理要素は適当な深さや部位で区域内の神経末端に圧力をかけたり、引張り応力を加えたりすることが多く、これらの神経末端の機能障害を引き起こし、この機能障害は内臓自律神経と隣接する経路を経由し、直接内臓機能に影響を与えます。電気生理回路の理論によると、自律神経機能の本質(自律神経の電流量の変化)に影響を与え、一方、この四大病理要素の発生が臓器の電気生理回路上に発生したら、電気生理回路の電流量の変化が生じ、直接的に内臓機能に影響を与えます。

 脊柱の骨性組織は様々な原因により脊柱自体の位置変化を生み出し、自律神経節の大部分は脊柱の前面及び両側に有り、椎体の位置変化が発生すると、必然的に関係する自律神経節に圧縮、引張り応力が発生し、自律神経の機能障害を引き起こし、これにより関係する臓器の疾病が引き起こされるのです。

治療方法

 脊柱区域の病因学理論は、すでに針刀医学の大量の臨床実践により実証されており、針刀の主な治療法で関係する病変部位の軟部組織の癒着、痙縮、瘢痕、閉塞などの病理要素を取り除きます。すると牽引、圧縮応力を受けていた末梢神経の機能が回復し、手技により椎体の転移を正常に整復し、最終的には自律神経機能と電気生理回路の電流量も正常に回復し、これにより根本的にこれらの難治性内臓疾患の病因を取り去り、内科疾患の根本的な治療が可能になるのです。

 この類の内科疾患にかつては様々な教科書通りの治療法で治療し、効果は良くありませんでしたが、その根本原因は我々がその類の疾病の第一である最も本質的な病因を認識できていなかったからで、本質的な病因を理解してからは、これらの難病もさほど難しく感じなくなりました。

おわりに

「夾脊」という穴は歴史的にも内臓疾患に対して効果的だと言われいた中で、上記内容の通りで科学的にも鍼灸治療の有用性が実証されています。経絡の教科書に「夾脊」はありますが、位置が分かるだけで、歴史的背景や科学的根拠は書かれていません。上記内容を理解すれば、根拠を持って治療できるだけでなく、患者さんや他職種に対する説明においても説得力のある説明ができるのではないでしょうか。私自身も興味深い内容でした。

参考文献:朱汉章,针刀医学原理,人民卫生出版社:2002

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